フィリピンの貧困地域、という言葉から、私たちが連想するものは何でしょう。
ゴミ山、ゴミを拾って生活する人、衛生状態の悪さ、有害物質……
マイナスイメージが強いと思います。
首都マニラでも最貧地域とされるバセコ・トンド地区。
ここを舞台とする映画が、今年のSKIP シティ国際Dシネマ映画祭で上映されました。
邦題は「鉄屑と海と子どもたち」(ラルストン・G・ホベル監督、2009年)。
同映画祭にて脚本賞を受賞しています。
主人公ら少年たちは、海底に潜って鉄屑を拾っては換金し、家計の助けにしています。
これは非常に危険で、映画の中でも少年がひとり、波にさらわれてしまいます。
映画のキャストは、役者としては素人、けれども現地で実際に潜りを行っている少年たちから選ばれました。
主役の少年は当初文字が読めず、耳で聞いて台詞を覚えました。
それが撮影終了までには文字が書けるようになりました。台本も自分の台詞だけでなく、全体を覚えてしまうほどだったそうです。
映画は丁寧で詩的な映像が印象的です。
ゴミ山や貧困、臓器売買などが赤裸々に、あるいは淡々と描かれつつ、そこにある人々の営みが、静かな感動を呼びます。
私はこれを観た後、貧困地域を、単なる「不幸な場所」と捉えることができなくなりました。
このような子どもたちの存在は、実は現地ソーシャルワーカーでさえ、把握するのが難しいそうです。
映画は彼らの存在を広く知らせ、彼らの支援・安全の啓発につながるような、NGO参入のきっかけにもなりました。
切ないけれども美しい映画を観て、私たちとフィリピンの子どもたちがちょっと近くなる。
彼らを思うことが、日本に住む私たちにとっても、何かのきっかけになればと思います。
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の作品紹介ページ:
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭「鉄屑と海と子どもたち」
公式ウェブサイト(英語):
Bakal Boys
(YS)