2010年9月25日土曜日

香港映画に描かれた中国

ジャッキー・チェン主演の香港映画「プロジェクトBB」(2006年)に死刑のシーンがあります。
刑務所の参観者たちの前で行われる、銃殺刑のデモンストレーションです。

香港は返還前の1993年に死刑を廃止しており、中国へ返還された97年以降もそれは変わっていません。一方、中国には死刑制度があります。
全世界の死刑執行数の70パーセント以上が中国で行われています。
「プロジェクトBB」中では銃殺刑でしたが、中国の死刑は、執行にかかる費用その他の理由によって、その方法が銃殺から薬物注射に切り替えられつつあるということです。


アクション満載のエンタテインメント作品「プロジェクトBB」でも、刑務所参観は全くのフィクションというわけではありません。
香港のスタンレーには刑務所博物館があって、いつでも観覧することができます。しかも、その隣には本物の刑務所が。

 アクションやラブロマンス、悪く言えば“売れるなら何でもやる商業至上主義”というイメージがある香港映画。
批判するといっても、バグパイプの音色によってイギリス植民地政府への思いを描く程度のものでした。
だからこそよけいに、観客が作品の中から自由にくみ出す楽しさも、たくさん埋め込まれているのかもしれません。

スクリーンの向こうからぐいぐい押してくるのではなく、何だかわからない残滓があって、「これは腹が立ちませんか?」とちょっと問いかけているような気がする・・・。どのように考えるか、その後は、受け取った側それぞれのことであり、百人百様の感想や解釈があるでしょう。そして、考えない、という選択肢も。

ナレーションもテロップも入れない観察映画「精神」の想田和弘監督は、「主張したいなら、(映画でなく)標語でいい」と言いました。
監督のその言葉に、観る人の内部に在るものと、映画とのぶつかりあいが新しい何かを生み出すとの信念がある、と私は思いました。

映画を観る体験によって、観客自身の現在の立ち位置があらわれ、将来の方向性が見えてくる、そんな“きっかけ”となる映画に出遭いたいものです。

(WE)